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贅沢すぎるペン「ファーバーカステル 伯爵コレクション」の魅力

鉛筆の基準を生んだメーカー

 「2B」や「B」「HB」といった鉛筆の芯の硬度は、鉛筆を日頃から使っている人には馴染みのある表記だと思う。

 この硬度を制定したのは、ドイツのファーバーカステル(Faber-Castell)というメーカーだと言われている。同社は、1761年にカスパー・ファーバー氏が鉛筆の製造を始めたことに端を発する老舗文房具メーカーだ。

 同社の公式ウェブサイトによれば、当初同氏は、地元の仲間のために鉛筆を作っていたそう。次第に、鉛筆を販売するようになると、その品質の高さから支持を集め、ビジネスとして成長していったという。

 その後1851年に、ローター・フォン・ファーバー氏が鉛筆の長さ、太さ、硬度の基準を作成したとされ、この基準が現代でも息づいていると言われている。

 同氏は鉛筆に「A.W.Faber」(2代目のアントン・ウィルヘルム・ファーバー氏のイニシャル)と刻印することで他社の鉛筆と同社の製品を区別し、筆記具に「ブランド」という概念を持ち込んだという功績もある。

 つまりファーバーカステルは、現代の文房具産業の基礎を築いた立役者のうちのひとつに数えられる、生きる歴史とも言えるメーカーなのだ。

伯爵コレクションの魅力

 そんなファーバーカステルが1993年から製造しているのが「伯爵コレクション」と呼ばれる高級ラインだ。「伯爵」の由来や、同社の歴史、功績はここにまとめ切れないほど膨大にあるので、またの機会にまとめるとしよう。

 伯爵コレクションは、マテリアルやデザイン、製造工程において、同社のレギュラーラインとは区別された、より高品位なライン。今回のレビューは、伯爵コレクションから「ギロシェ ボールペン(コーラル)」と「ギロシェ ローラーボール(ブラック)」をピックアップ。

 ギロシェとはヨーロッパ伝統の装飾技術である「波縞模様」を意味する。このシリーズは、樹脂製のペン軸に波縞模様をハンドメイドで刻印し、モデルによってはラッカーを吹いて磨き上げるという手間を経て、製造されているそう。

 また金属部分は希少金属であるロジウムでコーティングされ、貴金属をも思わせる深い光沢を湛えている。特にローラーボールは、キャップが大きいため、迫力もひとしおだ。

 使用感だけで言えば、手作業で作られていたり、希少金属が使われていたりしても、書き心地が著しく良くなるとか、字が他のボールペンを使うよりも上手く書けるということはない。むしろ、ペンの下部に重心を持たせたり、グリップを高めたりといった、製図用のペンがしているような、「書きやすくするための工夫」などは、このシリーズには見られない。

 しかし、「このペンで下手なことは書けない」「雑な字を書くわけにはいかない」と思わせる魅力を、このシリーズは持っている。実用面というよりも、質感や素材のよさによって、書き手に影響を与えるペンだと思う。

キャップの感触や芯を繰り出す感触も楽しい

 ボールペンは右回転の繰り出し式。繰り出す感触は非常になめらかで、ほどよく重みがある。ローラーボールのキャップはペン先の溝に、キャップが固定される仕様で、しっとりと心地よく収まり、遊びが一切ない。こうした感触にも同社のこだわりを感じるし、毎回、ペンを触るのが楽しくさえなる。

 クリップ部分は、付け根を可動式にして、内側にバネを仕込むこだわりよう。(確認を取っていないので定かではないが)可動部の小さなビスの頭さえ、手に引っかからないように丸めてあるように見える。

 詳細は語られていないが、ギロシェの製造工程を数字に表すと、「数百」という値になるそうだ。成型や塗装、研磨といった工程だけでなく、キャップをしめたり、ペンを繰り出したりする感触も、おそらく丹念に調整されているのではないだろうか。

 実用品、事務用品というよりも、生涯を共にする相棒や、大事に手入れをして長く使うといった、趣味の対象として所有するのにふさわしいシリーズ。気に入ったカバンやスーツ、革靴、あるいは自動車や腕時計、家具を揃えて、文房具にもこだわりたくなってきた方は、このシリーズに強烈に惹かれてしまうのでは?

ファーバーカステル